脳梗塞(こうそく)で失われた身体機能が回復する過程で、反対側の脳が機能を「肩代わり」する様子を、生理学研究所(愛知県岡崎市)の鍋倉淳一教授(神経生理学)のチームがマウスで解明した。同様の現象は人でも経験的に知られているが、生きた動物で裏付けたのは初めて。効果的なリハビリへの応用が期待される。12日発行の米国神経科学学会誌に発表した。
マウスや人など多くの動物は、右脳が左半身、左脳が右半身を制御している。チームは、マウスの右脳で触覚をつかさどる「体性感覚野」に脳梗塞を起こさせ、左脳の変化を詳しく観察した。
その結果、傷害直後は左脚の触覚が極端に落ちたが、1週間後には健康な左脳の体性感覚野で、神経細胞同士をつないで刺激を伝えるシナプスが盛んに作られたり、消失し始めることが分かった。右脳に代わって左脚を制御するために神経回路の「つなぎ替え」が起きているとみられ、その状態は約1週間続いた。
また、傷害から4週間後、左脚に電気刺激を与えて左脳の働きを見たところ、健康時の右脳と同じような反応を起こしていることを確認。これらの結果から、チームは左脳が右脳の同じ部位の機能を完全に肩代わりし、左脚の機能を取り戻したと結論付けた。
鍋倉教授は「左右の脳の機能交代は、段階的に進んでいく。人の場合でも、発症から特定の期間に最適のリハビリを実施することで、効果がより高まるかもしれない」と話す。【元村有希子】
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